ムシノシラセ

いくつかのサインを受け取っていたので、
その知らせを聞いた時「ああ、やっぱり」と思っただけで、
別に驚いたりはしなかった。
今朝、苺ママから電話。
親戚のおばちゃんが亡くなった。
お通夜に行く待ち合わせ場所を決めて電話を切って。
くるくるっと
いろいろ思い浮かべて、
おばちゃんの最期の顔が浮かんだ。
私達はあの時ふたりとも笑顔だった。
妹の四十九日で、秋田へ行った時。
夕食会で私はおばちゃんの隣りに座っていて、
たくさん話をしたけれど、今一番印象に残っているのは、
「苺ちゃんのエッセイは素晴らしい。
 特に志乃ちゃんが亡くなった時のエッセイは何度も読んでるの。
 何度も泣いてしまうの。あんなふうに書けるってすごいわ」
っておばちゃんが興奮気味に言っていたこと。
翌朝。
その日は私の誕生日で。
私はみんなより一足先に、
ひとりで東京へ戻ることになっていた。
夜、誕生会を仲間達が開いてくれる予定だったから。
ホテルの玄関で、
「じゃあね、またね。またすぐ会いましょうね」
と笑って手を振り合った、あれが最期になった。
さようならと笑って別れた私達。
いいお別れができたなと思う。
お互いそうとは知らずに。
こんなことがあるたびまた私は思う。
お別れはゼッタイにくるのだ。
だから、
今一緒に居られる人を大切にしよう。
好きな人にはできるだけ会おう。
ずっと同じままではいられない。
続かない。
触れ合っていられる時間には限りがあるから。
私は、
「近くにいることだけが為になるとは限らない。
 遠く離れることが
 一番その人の為になるってこともあり得る」
と書いたばかり。
これは私がずっと続けてきたやり方。
どうだろう?
ここで方法を変えてみようか。
飛び込んでみようか?
どんなことをしても離れない、一緒に居ようなどとは
何に対しても誰に対しても思いもしてこなかったこと。
方法を変えると何が変わるだろうか。
世界が変わるだろうか。
実際にそう動くことでしか答えは得られないだろうな。
妹やおばちゃんが遺していってくれたメッセージを大切にしたい。
これからアトリエに行って。
カリヴァン博士が教えてくれたパスを通って、
あの場所へ飛んでゆき、
今日できることをやって、
またこの場所に戻ってきて。
それからケーキを焼こう。
美味しいケーキを!
おばちゃんのために。
ブルーベリージャムとチーズを入れたケーキ。
そして、
お通夜に行こう。
もうおばちゃんはここにはいないし、
私達はとっくにいいお別れができてるし、
本当は行かなくてもいいんだけど、
おじちゃんが泣き崩れているらしいので、
励ましに行くつもりで出かけようと思います。

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