hさんへのメール

心の内を、打ち明けてくださってどうもありがとう。
さて、
ところで、あなたが今一番大切なものはいったいなんだろう？
自分の気持ちですか？
『「じゃあ、合点、作りまさぁ！」
　って感じになりません、正直、今は』
って？なぜだろう？
あなたの中のどんな部分がこういう言葉を言わせているんだろう？
私とhさんは違う人間です。
そこを踏まえた上で、
プロとして創作活動を続けてきた立場の人間から
少しコメントさせてください。
作品は、
単なる「もの」ではありません。
目に見えない霊的なものが背後にある、不思議な存在です。
どんな分野の作品にも、それは潜んでいます。
私達ひとりひとりが生まれてくることに意味があるように、
作品が生まれてくることにもすべて意味があります。
作品を私物化して考えたことは、
私は、ただの一度もありません。
作品は、
私を通して、大いなる源から世界へ向けて、降りてきたものです。
誰かのもとへ、必要な人のもとへ、届けるために。
作者には、その使命があります。
このことを無意識でも意識的でも、理解している者が、
「プロフェッショナル」という領域に足を踏み入れることができます。
hさん。
あなたが今、ぎゅーっと強く握って離さない、その手のひらに、
いったい何が残りますか？
そんなに強く乱暴に握りつぶしてしまって。
あなたの創ったものは、喜んでいますか？
この世に生まれたことを、
喜んでいますか？
あなたの作品は、呼吸をしていますか？
「歌って」と呼びかける声に対して、
「はい、どうぞ。呼んでくださってありがとう。
　忘れずにいてくださってありがとう」
と、言っている声が、私には聴こえます。
あなたの創ったものが、そう言っているのが、
聴こえます。
作品の声が、聴こえます。
自分が創ったという傲慢な心で、その命を握りつぶす権利が
あなたにあると思いますか？
あなたは、自分の大切な思い入れのある作品だから、と言いますが、
それはエゴの声であって、真実の声ではありません。
そこに、愛はありません。
あるのは、
あなたのエゴだけです。　　わかりますか？
hさん、一歩進んでください。
自分の中に、怒りや憎しみやいら立ちを感じるなら、
それはエゴの仕業です。
愛から発するものは、ただ、
自分の真ん中に温かいものが流れるのを感じるだけです。
エゴに騙される生き方にサヨナラする時がやってきました。
hさん、心の短剣を引き抜き、エゴを殺しなさい。
愛を持って。
どうか忘れないでください。
目的はいつでもたったひとつです。
今よりもっと、よくなるために。　明るくなるために。
高く飛ぶために。
それだけです。