天使のいる病院

三日目の朝から徐々に食事ができるようになってきた私。
メンバーの励ましもあり、
四日目には、病院食をほぼ完食できるほどに回復。
こうなってくるともうこの状況を楽しもうという心が湧いてくる。
部屋に置いてある病院のパンフレットに目を通した瞬間、
なんですとぉーっ!?
と私の目玉はまんまるに。
この病院、院内に教会があると書いてある…..
そういえば、毎日遠くから賛美歌が聴こえてきていた。
屋上庭園もあるらしい。
なんじゃ?この病院!
歩いてもいいかとドクターに尋ねたら許可が下りたので、
さっそく散歩。
春みたいに暖かい日だった。
いそいそと部屋を出る私。
(気分はすっかり治っている)
まず、庭へ。
冬なので、ハゲ庭ですが、
まあ!  バラが一輪だけ!
小さな魔女集団、カヴンのメンバーを思い出す。
サインだ。
みんなありがとう。
くるくるっとひとまわり。
春とか、花の季節は素晴らしいだろうな。
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次に、教会へ。
私が入院している二号館にあるホールを目指していくと、
今日の業務が終わった外来エリアにぽつんと明かり。
あれだなと思い、近づくと、扉が。
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中をのぞいたら、十字架が見えた。
そぉっと扉を開けたら….
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ゆっくり前に進み、
魔法のバッグからエメラルドを取り出し、短い祈りを捧げた。
ここ、病院だよな。……。
厳かな気持ちになって、今度は一号館にある礼拝堂を目指す。
渡り廊下を渡る時、私は一瞬で、
突き当たりの一番奥の壁にかけてある絵画は、
天使の顔に違いないと直感した。
(近づいてみたらその通りだった)
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途中、とても可愛らしい家が病院の敷地内に見えた。
あれはなんだろう?
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廊下を曲がって、
普通の病棟の中に、
突如その空間は現れた。
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重い扉を押して中に入って、心の底から驚いた。
どうして。
なぜ、こんな。
私はどうしていつも…..
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最前列に跪き、手を合わせて祈った。
     天使よ、
     ここまでお導きくださりありがとうございます
     病という宝を、ありがとうございます
     自分の場所に帰ってから、この宝を、どうか、
     世界のために使えるよう、私をお守りください
この病院は天使のいる病院なのだと、その時、知った。
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部屋に戻ったら「おやつです~」と紅茶とティラミスが届いた。
「本日は毎月恒例の『おやつの日』です」と書いてある紙とともに。
毎月恒例のおやつの日….
そんなタイミングで入院した私… 食いしん坊の私….
世のからくりの不思議さに、うーむとうなだれてしまった。
私は、
自分はものすごく素敵な道を歩いているんじゃないかと本気で思った。
これまでもちらっと思うことはあったけど。
もっと、もっと。
自分の幸せを思った。
そうか、今日はバレンタイン。
師匠にはなにもプレゼントできなかったな。
ティラミスを半分残して、冷蔵庫にしまった。
あんまり美味しいので師匠にあげようと思って。
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こんな「おやつの日」を設けることも、
免疫力アップに繋がると私は思う。
この病院の理念は素晴らしい。
どうやらキリスト教の教えに根ざす理念らしいけれど、
(部屋には聖書も置いてある。
 ご自由にお持ち帰りくださいと書いてあったので、もらってきた)
院内の雰囲気やスタッフの態度には一切宗教色を感じない。
私が受けた感覚としては、
宗教そのものより、一番深い場所にある真理を皆全うしている感じだった。
食事制限がある病気以外は、部屋に外食を持ち込んでもかまわないし、
一階のレストランからのルームサービスも受けられるし、
特別豪華メニューの選択もできる。
(でも私は普通食で充分美味しいと思った)
家族の面会は24時間体制。
消灯は、一応21時となっているけれど、個人の判断で起きていても
何か言われるわけではない。
部屋に花を飾ったり、アロマオイルを焚くことも許される。
各部屋には絵画が飾ってある。
入院したからといって、患者を規則でがんじがらめに縛ってしまうことを、
この病院はしない。
何が病を治す手助けになるのか、そのことを知っているのだ。
素晴らしい病院だ!
入院費は高いけれど、
妥当な金額だと思う。
価値がわかる人には最高の施設だと思う。
私は、
窓辺に天使の像や、お気に入りの本や花など、いろいろ飾り、
病院生活を楽しんだ。
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さて、あっという間に時は過ぎ、
明日は退院という日。
おのせちゃんが本の原稿を持って打ち合わせに来た。
「病院見てみたいです~」と言うので。
(笑)
テスト原稿を印刷所に出すのに、タイムリミットがあるので、
ぐっと集中して二時間ほど打ち合わせ。
終わって、おのせちゃんに林檎を剥いてもらった。
「なんで人に剥いてもらう林檎ってこんなにおいし~のかね~?」
と言ったら笑っていた。ぷぷぷっありがとう。
その後、一緒に教会へ行く。
おのせちゃんもびっくり。
驚いていた。
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驚いたといえば、もうひとつ。
ここの病院のロゴマーク。
今私がアルケミストにお願いしている首飾りのデザインとおんなじっ!
カドゥーケスの杖….
みつけた瞬間、死ぬほど驚きました。(いったい、この縁は…..?)
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退院する日の明け方、
下弦の月が奇麗だった。
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月が逃げていく。
(桃色の雲が月を追いかける手のように見える。わかりますか?)
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私が退院する日は絶対晴れるだろうと思っていたけれど、やっぱり。
太陽が眩しい光りとともに昇ってきた。
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師匠と苺ママと妹が、車に乗って迎えにきてくれましたー(嬉)
縁起を担ぐママが「花は置いていきなさい」と言ったので、
ガーベラとはここでさようなら。
私を励ましてくれてありがとう。
病室にぽつんと残される感じが切なかったけど、お別れだよ。
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病室を出る時、
振り返って写真を撮った。
お世話になりました、ありがとう、と、心の中でつぶやいて。
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みんなで教会へ寄り、お礼のお祈りをして、
一階で会計を済ませて、ルカおじさんに挨拶に行った。
あの時から見守ってくれて、ありがとう、と。
握手した。
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病院を出る時、ちらっと振り返った。
ルカおじさん、ずっとあそこで、この病院を守ってるんだ。
世界を、
守ってるんだ。
そう思った。
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自宅に戻ったら、
入院する前に買ったガーベラが、まだまだイキイキ元気でびっくり。
また新しく、
私の日常が始まる。
これで入院事件のお話はおしまい。
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さて!
ところで。
入院六日目にビッグニュースが飛び込んできました!
私は、
私は、
私は…. 
とても遠い場所へ、仕事で行くことになりました!
南の島です。

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