「瞬きをするカメラ」

2014-2023

カメラの構造上、厳密にいうならば、
撮っている瞬間、写真家には何も見えていない。
プロは、想像力を働かせながら、
一瞬先の未来を信じて、
確信100%の世界で仕事をしている。
少しでも自分に疑いを持ったら、もう写真の世界では生きていけない。
だから、
一番欲しい絵の、一瞬手前でシャッターを切る為に、
カメラを使いこなす技術よりも精神的な技術を磨く必要がある。

写真は、
カメラが瞬きをする瞬間(ファインダーがブラックアウトした瞬間)に
生まれるものだけど、
じゃあ本当に撮っているのは誰なのか?という疑問が私の中には常にある。

こういうことからも、
私が撮ったと思ってる写真たちは、
写真の神様からいただいたものなんだという考え方が生まれてきたと思う。

その昔、
二眼レフと呼ばれていたカメラたちは瞬きをしなかった。
写真家たちはシャッターを切る瞬間を見ることができたのに。

なぜカメラは瞬きをするようになったんだろう?

一眼レフカメラが登場してから、
特にデジタル化が進んでからは、
カメラに主導権を渡してしまったように見える写真家たち。
“その瞬間”を見ながらシャッターを切る時代はあっという間に過ぎ去った。

ひょっとして、
カメラが目を閉じるようになったのは写真の神様の計画なのかもしれない。

カメラの目が閉じることで、
写真家の瞳が開くように。

世界を見たいなら、
心の目を使うこと。

決してそれを
忘れないように。

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