豪雨

私には変な癖があって、
かさぶたをみつけると、
わざと剥がして血をじっと見るようなところがある。
今年のお正月に家族でカラオケに行った時、
妹が歌っていた歌がなんだったか気になる。
永島さんの歌を歌っていたはず。
私の記憶では「Maybe I Love You」だったんだけど
永島さんに言ったら「それカラオケになってないよ」と言われて、
え~じゃなんだったっけなんだったっけとずっと気になっていた。
パソコンのハードディスクの中に入ってる…..ビデオのデータ。
見よっか。 どぉしよっか。 見てみよっか。
いやいや、今はまだやめよう。
…………..と、繰り返したここ数ヶ月。
とうとうさっき、
マウスに人差し指を置いたまま、しばらく、う~~んと考えて。
見てみちゃった。
久しぶりに見た元気な妹の姿。
そう、今年のお正月はまだものすごぉーい元気だったのだ。
楽しそうに歌ってる。
彼女が歌っていたのは、
       
「笑おう!」だった。
永島さんのライブステージングを真似しながら。
とても幸せそう。
妹があの時言っていたことを思い出した。
「少しでもながちゃんにお金が入るように」
たしかそう言っていた。
印税の話だろうか。
一曲歌うと著作者にお金が入るってことを言ってるんだと思うけど。
ものすごいリアルなラインで、彼女は永島さんを応援してたんだな。
ただ一方的に好きだから、とか、
そんなレベルじゃなかった。
彼に何かしてもらおうとしていたんじゃなくて、
彼に何かしてあげたいと思いながら、
ファンという立場から応援していたんだ。
私はその遺志を受け継ぎたい。
パソコンの画面に妹の姿が映し出された瞬間、
鋭利な刃物で心臓をひと突きされたような感覚があって、
その後、
ゆっくりと、
じわじわと、
髪の先まで、
手足の爪先まで、
その痛みが痺れるように広がっていった。
それでも「見なければよかった」とは思わなかった。
こんなに痛いということは、
こんなに愛してるということだ。
窓の外、いきなりの豪雨。
妹は、まだ、あちらの世界の言葉を持たない。
「いるよ」というサインがどうしても雨になってしまう。
やがて光りを取り戻すまで、
私もこの場所で、
一生懸命生きる。
妹は消えていなくなったわけではない。
姿を変えて、
生きる場所を変えただけ。
そのことが、ちょっとずつわかる。
ちょっとずつだけど、
わかってきたように思う。
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