ニューカレドニア その3

朝から曇天。
帰国してから確認したら、どうも雨期の真っ最中だったらしい。
へこむ編集者。
ほほほほ(笑)
仕方ないわね~ そんな時期にロケ組むから。
私は師匠の教えで「全天候型カメラマン」を目指しているので、
天気が良いとか悪いとかそんなことはあまり気にならない。
特に大自然を前にしたなら。
天の計らいを信じて進もうと思う。
目の前に見せてくれているものを有り難く受け止めながら。
で、
灰色の空の下(南の島のなのに!笑)、
州立公園を巡るツアーに参加した私達は、
英語と日本語を半々に話すガイド、フランソワくんとともに
熱帯雨林を目指すことに。
レインフォレスト。
私が持っているルーシーのアクセサリーに、
レインフォレストという作品名がついたものがある。
これはものすごい宝物。
今日の目玉はカグーに会えるかどうかというところ。
なぜか会えるだろうと私は簡単に思っていた。
で、
実際、会えた。割と簡単に。
ひょこりひょこりと歩いているのを発見。
たくさん撮った。
大きさはニワトリみたい。
でも色がすごい奇麗!
ロシアンブルーという種類の猫の毛色に似ていた。
グレーと淡いブルーが混ざったような色。
目は真っ赤だった。
足も。
ランチは河原でバーベキュー。
フランス式で、美味しかった。
ビール。フランスパン。クスクスと香草のサラダ。
野菜とトウモロコシのサラダ。
エビをボイルしたもの。
鹿肉のグリル。豚肉のソーセージ。
デザートは、フルーツとコーヒー。
ツアー参加者みんなで取り分けて食べた。
1963-1.jpg
ランチタイムに、陽がさあーっと射してきた。
さっきのあの景色をもう一度撮りたいなと思う場所があったので、
帰る途中そこで車を止めてもらった。
同じ場所なのに、全然違って見える。
色が。
全然違う。
光りって重要だ。
きっと心の光りも同じだろう。
かみさま、ありがとう、とシャッターをきる。
その夜はホテルのフランス料理。
きっと本格すぎたのかな。
私の口にはあまり合わなかった。
昼間の、素朴なランチの方が美味しかった。
私は、
素材をさっと焼いたりボイルしたり、
味付けも塩胡椒だけみたいな、
ごく簡単に作った食事をとても美味しく思う。
おそらく、
ゆうべも食べて今夜も食べて、続けて食べたのがいけなかったかも。
こんな豪華で贅沢な食事。
私の人生では「ごくたまに」じゃないと、その効力を失うんだ。
どんなに素敵な魔法も。
効かない。
翌朝はものすごーく早く起きて朝市へ。
密かにとても楽しみにしていた。
いろいろ買い食いしてみようかと思っていたんだけど。
前夜の食事が重くて、食欲が無い。
小さなバナナを一山買う。
100フレンチパシフィックフランンだった。
あまりの安さに驚いて日本語で「えっ?」と聞き返す私。
こんなに安いのに、さらに一本おまけしてくれた。
食べてみたら、大変な美味しさ!
南国は果物が美味しいなあ~
とても甘いのに軽い感じ。
不思議なバナナ。
一日であっという間に全部食べてしまった。 また食べたい。
1963-2.jpg
それから船で20分ほどのメトル島へ。
空、またまた灰色。
まるで台風の前のような天候になる。
島へ渡って、いくつかマリンスポーツを取材撮影するも、色は灰色。
私は心の中でちょっと可笑しくなる。
これ関係ないんだよな~私の人生には。だって灰色だもの、と思う。
ファインダーをのぞきながら、
「こっちの道は私の行くべき道じゃないんだな…」と感じる。
さて、
シュノーケリングをやろうということになったんですが。
まってましたーと私はウキウキでやる気満々。
「水中撮影をしたいんです」と鼻息荒くコーディネーターに告げると、
「泳ぎは?得意?水中撮影ってさ、カメラの技術関係ないんだよね。
 海に慣れてるかどうかが大切なの。マリンスポーツの経験は?
 あるの? 
 今日は状況悪いよ。波も荒れてるし。流されるかも。
 それでもやる?大丈夫?」
と言われて、
三秒で諦める。
「流されるかも」という日本語がものすごく恐ろしかったので。
よく考えたらマリンスポーツの経験なんて皆無。
急にしゅんとなる私。
本格的な水中撮影をしたいなら、
舟で沖のポイントへ出て、撮影しなければならないらしい。
海を見たら浜に近いほんの浅瀬でシュノーケルをやっている人達の姿が。
「あれ、あそこのあの人達は何をやっているんですか?」と尋ねたら、
「まあ、あのへんでもね、一応魚はいるよ」と答えるコーディネーター。
「あんなんでもいいですけど。海、入りたいんですけど」
と小さな声で力なく言うと、
「いいんじゃない。あそこあたりならいいと思うよ。
 あのブイの向こうには行かないでね。もう引き潮だから。気をつけて。
 早くやって早く上がってきなさいよ」
と言いながらシュノーケルセットを貸してくれた。
「引き潮」という日本語も怖かったけど、
ちょっとだけやろうと、編集者とふたり、海へ入る。
(この時初めて知ったけど同行編集者は実はダイビングの免許を持っていた)
私のド素人ぶりを見て(こんな人あまりこういうところには来ないのかも)
気の毒に思ったのか、「これ撒くと魚がいっぱいくるよ」とパンをくれた。
本当は心優しいコーディネーターさん。
さっきは厳しい口調の人だなあと思ったけれど、
海は命に関わる領域だから、自然とそうなるのだろう。
殊勝な心持ちで泳ぎ始めた私でしたが…..
海に顔をつけたとたん、 驚いちゃったね~!!!
ド素人の私にはこれで充分!と思ったよー
ああ….
ぜんぜんちがう。 私が住んでいる世界と、ここは、全然ちがうよ。
たしかに、パンを撒くと、しゃーっとたくさん寄ってくる。はえーっ!
なんであんな早く泳げるんだ~?あいつらったら。
嬉しくて楽しくてパンをいっぱい撒きすぎたら水が濁った。
それでも魚達があっという間にぱくぱくっと食べてしまう。
夢中で写真をいっぱい撮った。
1963-3.jpg
夜はグランドテール島へ戻って、
「運が良ければイルカが見れるかもしれない」というのを売りにしている、
島唯一の水上レストランへ。
ほんとかよ?と思いながら食事をしていると、他のお客さんたちが騒ぎ出した。
慌てて席を立って、海中を覗き込むと…..
いるよ! きたよ、イルカ!
ほぉ~ 
よーくよぉーく考えたら、野生のイルカを海で見るなんて、初めての経験かも。
すっかり興奮してシャッターをたくさんきる。
イルカ、何度も何度もやってきた。 ジャンプもしていた。
夜の暗い海を、悠々と泳いでいた。
あの姿、忘れられない。
1963-4.jpg
私達は、
帰国する二日前、イルデパンという島へ渡った。
私は、
この日は晴れるだろうと直感していた。
「蒼い絵」はこの島で撮れるはずだと確信していた。
思った通り、
空港に着いた時には少し雲があったけれど、
ニューカレドニア滞在中、この一日がもっとも光り溢れた日となった。
空の色も海の色も奇麗だった。
真夏の、目に痛いくらいの青とは違って、
どこか淡い優しい青だったけれど、とても好きな色だと思って写真を撮った。
世界の色を見て回ることは大切だなと思う。
私の生まれた国は、あまりカラフルではないので。
それがいいとかわるいとかじゃなく。
ただもっと色を見たい、感じたいと。
静かに願う。
この美しい青。 第五チャクラの色か。 心に刻み込もう。
どうか忘れないように。 自己を表す、青の色。
そして、
この美しい白。 砂の白。 第七チャクラの色か。 大いなるものと繋がる場所。
白い砂浜に寄せては返す青い波を見ていると、
まるでハイアーセルフにアクセスしている
自己の営みを見ているかのような錯覚に陥る。
そうか!このプロセス! と思う。
いつだって自然は偉大なる教師だ。
求める者に答えをくれる。
1963-5.jpg
一見、ただの川に見えるけど、
実は海から流れている海水だという場所を歩いて渡る。
行きは満ち潮だったので、腰まで水に浸かりながら歩いた。
帰りは引き潮で、足首くらいまでしかなくて楽だったけど、
重い撮影機材を持っていたので、とても緊張した。
海水の川のあと、ジャングルを歩いて、
急に開けた場所に出た。
天然のプール。
入り江なので、波が立たず、安心してシュノーケルを楽しめる。
それでも深い場所もあり、海の底は、怖い。
私にとっては慣れない世界だ。
でもこれからはもっともっと知りたいと思う。
呼吸の出来ない世界。
息を止めて、みつめる世界。
精神世界では何度も訪れる場所。
私は時々心の深海に潜る。
リアルな世界でも、もっともっと、潜ってみたい。
ダイビング…. ライセンス取ろっかな。 
ちらっと思いながら、
またまた泳いでたくさん写真を撮った。
村にひとつある教会へも行った。
礼拝堂に大天使ミカエルの像。
村人たちがたくさん集まってきた。
そろそろミサの始まる時間らしい。
酋長に会えたので、挨拶をする。
1963-6.jpg
ここはまだ、ほとんど人の手が触れていない島。
ランチにブーニャ料理という、古くから伝わるメラネシアンの伝統料理を食べた。
私は、
今回のニューカレドニア滞在中に食べたどの食事よりも、
この食べものが一番美味しかった。
これはまたここまで来ないと二度と食べられないだろう。
レストランで、
なんのアレンジも加えていない昔のレシピを守って出しているのは、
世界でもここだけらしい。
タロイモや野菜バナナやパパイヤや鶏肉や魚を入れて、バナナの葉で包み、
石焼で蒸すという素朴な料理。
味付けは、
ココナッツと塩胡椒、スパイスのみ。
すごくすごく美味しい!
それから、
やっぱり世界でここだけでしか食べられないというエスカルゴも食べた。
森の中で穫れるものらしい。
私は、
ブーニャ料理を食べるという目的だけでまたイルデパン島に来たい。
1963-7.jpg

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