「この世でのお別れ」

2014-2023

普段、テレビを全く見ないので、
ニュースが入ってこない生活をしているのですが、
友人知人からそれとなくいろんな情報は自然に入ってきます。

先日もこんなメールが届きました。

ーーーー
なつのいちご様
こんばんは!
そしてインドよりお帰りなさいませ(*´-`)
いちごさんの帰国を待っていたかのように、
ディープインパクトが、天にかけ上がっていってしまいましたね。。
去るときもあっとみんなを驚かすくらい速くに。
北海道では、まだ大きく報じられています。
競馬ファンではない私でも惹かれてました。
美しい美しい、特別な存在でしたね。
実際に会えなかったのが、心に残りですが、
いちごさんの写真のディープに会えて良かったです。
エッセイのバックナンバーの写真を、また見せていただいていました。
なんて優しい目でしょう。
(お馬はみんな基本的にやさしいですが、やっぱりぐっと来ました)
そして、そこにあったエッセイの言葉にも、
改めて心に残り勇気をもらった気持ちです。

“彼を見てると、
人生山あり谷あり、でいいんだなと思う。
もしディープが
スタートからずっと速いままの馬だったら
こんなにみんなに
希望を与えられなかったかもしれない。
不安や恐怖からの脱出。
一度そこをくぐり抜けてからしか見えない、何か。
「このやり方が一番面白いぜ」と
教えてくれてるような… まったくすごい馬。
ディープインパクト。”(なつのいちごessayバックナンバーより)

ディープといちごさんに改めて感謝を伝えたくなりまして。。
とりとめのないメールで失礼しました。
読んで下さりありがとうございます。
ーーーーーー

このメールにありがとうと短い返信をした後、
どういうわけか号泣してしまいました。自分でもびっくりするくらい。
悲しいというか、、、、なんだろう?わからない。何の涙かな?

全盛期の頃にたった一度、撮影しただけなのに。こんなに泣けるなんて。

ファインダーの中から見たディープインパクト。

実際の走りを目の前で見た時、大きな衝撃を受けたディープインパクト。

にんじん食べてる時はとても可愛かったディープインパクト。

いろんなディープインパクトが鮮やかに蘇りました。

しばらく泣いて、
それから自分でもエッセイのバックナンバーをもう一度読んでみました。
実は少し前にも偶然、このエッセイを読んでいたのですが。。。

何だか虫の知らせみたいだな。

そうか。。。

ディープは本物の天馬となって、
遥か彼方空の向こうへと駆け抜けていったのか。

この世で会えてよかった。

大活躍中の頂点にいる彼を撮ることが本当にできてよかった。

私は被写体運が良い。 
この仕事をしながらそれだけはずっと感じてる。

ディープインパクトを知らない方のために、
どんな競馬馬だったか、ネットニュースの記事から以下に抜粋します。

ーーーー
ディープインパクトは生まれながらにして、周囲の期待を一身に集めていたわけではない。
2002年に行なわれた当歳時のセレクトセールで、
サンデーサイレンス産駒の牡馬は14頭落札されたが、そのうち、
ディープインパクトの落札額は上から9番目だった。
しかも、
サンデーサイレンス産駒なら1億円超えは当たり前という時代にあって、

7000万円(税別)でしかなかった。
だが、のちにこのことが、ディープインパクトにとっては
「幸運だった」という話を、

生産牧場であるノーザンファームに取材で訪れた際、聞いたことがある。
ディープインパクトの特徴は、サラブレッドにしては小柄で華奢なことだ。
そのため、スタッフが
「本当は牝馬ではないか?」と疑ったというエピソードもある。

蹄(ひづめ)も薄く、一生懸命走るとすぐに血だらけになった。
デビュー前の評価は、ひと言で言って「小さくて虚弱」。
ゆえに、同期の馬たちと同じようには調教メニューをこなせなかった。
同期の馬たちが、デビューを目指して牧場の坂路コースを駆け上がっている頃、
ディープインパクトは1頭だけ、
自分の体を大きくするための地道な体力作りに専念しなければならなかった。
やがて2歳の夏。同期の馬たちが次々とデビューを果たしていく。
だが、ディープインパクトは、まだ牧場にいた。
秋になって、ようやく栗東トレセンの池江泰郎厩舎に入厩するが、
デビューまでには、さらに3カ月ほど待たなければならなかった。
「実は(ディープインパクトは)もっと早い段階で
 デビューさせようと思えばさせられた」という話を、

ノーザンファームのスタッフに聞いた。
「もし、ディープインパクトがもっと値段の高い期待馬で、
 しかも、あの厩舎で、あのオーナーでなかったなら、
 おそらく見切り発車でデビューしていたのではないか」

とも言っていた。
しかし、みんなが”待った”。
いつか、機は熟す。その時を信じて、待った。
「今思えば、あの時、みんなが”待った”ことが、
 ディープインパクトをあれだけの馬にしたのかもしれません」

牧場スタッフがしみじみと言ったそのひと言が今も忘れられない。
競馬には”待つ”ことも必要で、”待つ”ことによって、
大きなミラクルを生むこともある。

そこに、競馬の奥深さの一端を垣間見た気がした。
ディープインパクトには、本当にさまざまなことを教わった。
牧場スタッフによれば、その最期は「観念したように、苦しまず、
静かなものだった」という。

ーーーーー

ディープインパクトの撮影は、
「競馬ファンや、競馬専門のカメラマンが撮ると、
 どうしてもかっこいい写真しか撮れないから、
 競馬を全く知らないカメラマンに撮らせてみよう」ということで、
当時の週刊ポストの編集長から、直接オファーを頂いた仕事でした。

私はディープインパクトが如何に凄い馬か、何も知らずに撮影に向かいました。

私が撮影したディープは「普段の顔」のディープ。

ただの馬。。。。笑

競馬雑誌には絶対に載らないであろう写真ばかり。

仕上がりはどれも編集長の狙い通りだったらしく「大成功」と喜ばれました。

雑誌の発売日、ノーザンファームのスタッフからも電話が入り、
「苺ちゃん!よかったよ!ディープを素敵に撮ってくれてありがとう!」と、
電話を頂いたことも思い出しました。

レースでは、いつも決まってビリからスタートするディープ。
でも、必ず途中でスイッチオンになって、最後は一番でゴールする。

『いつもディープは、ここからでは届かないのでは…。
 と絶望させられるような後方からレースを進め、
 奇蹟的とも言える逆転劇を見せてくれる。』

週刊ポストのS氏の書いた記事のなかでこの箇所が一番好き。

きっと、私は、ディープのここに最も強く惹かれるんだろう。

ここからでは届かないのでは…。

絶望させられるような後方から…。

レースを見ていて、
ディープは、とても、とても楽しそうに走る馬、
走ることが大好きなんだなあという印象を持ちました。

私はもう泣かないと思う。

一度しっかり泣いたから。

いつかまた会いたい、ディープインパクト。

次にまた生まれ変われるとして。

お互い何に生まれ変わったとしても。

また会いたい。

また会いたい。

この世では、さようなら。

ディープインパクト
(週刊ポスト掲載)
ディープインパクト
(週刊ポスト掲載)
ディープインパクト
(週刊ポスト掲載)
ディープインパクト
(週刊ポスト掲載)
ディープインパクト
(週刊ポスト掲載)

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Warning: Undefined array key "show_google_top" in /home/xs097295/ichigo-natsuno.com/public_html/wp-content/themes/bloom_tcd053/footer.php on line 406

Warning: Undefined array key "show_google_btm" in /home/xs097295/ichigo-natsuno.com/public_html/wp-content/themes/bloom_tcd053/footer.php on line 406