長い旅 〜天使がくれた鍵〜 その2

そしてあのあと。
美味しい朝ご飯を食べたあと。
不動産屋さんに電話。
事情を伝えて、返ってきた答えは、
「ここに合鍵はないんですよ」
だった。
ない?
ないって?
そんなことあるのかー。
さよちゃんとふたりびっくり。
じゃあどうすれば?
と再び不動産屋さんに尋ねると、
「大家さんが帰宅するのは夕方です。
 もしその前に鍵が必要なら、
 鍵屋さんを自分で手配してください」
という答えが。
……..明日、搬入なんですけど。個展の。
作品はみーんなアトリエの中に入ったまま。
一部、最終仕上げとして、
これからまだ手をかけなきゃいけないものも数点。
夕方まで何も出来ないなんて。それは時間がもったいない!
というわけで、鍵屋さんを手配することに。
でも初めて頼むからどうしていいかわからない。
検索女王のさよちゃんがすぐにi-padでさくさく調べてくれた。
よかったー。渋谷にあるってー。
1時間以内に来てくれるらしい。
でも高いのねー。
何軒か探して、一番安いところで15,000円ですって!
わー、失くした私が悪いんだけどねー。
反省。気をつけよう。
というわけでホッとしつつ、ちょっと表参道を散歩しながら、
ゆっくりアトリエへ戻った私たち。
まもなく鍵屋さん到着。
が、しかし。
部屋の鍵穴を見るなり、
「あ〜これはさっきの料金じゃ無理ですね」
ですって。
なんですと?
じゃあいくらになるの?と尋ねれば「30,000〜40,000円」と。
すみませんがもいっぺんいってもらえますか的な心の私…………
この瞬間、あるひとつの「お商売のやり方」みたいなものがわかった!
やー、すごいねー、べんきょーになるなー、なるほどー、
って感心なんかしてる場合じゃない。
帰ってくださいー!と私。
だってすぐ次を探さなくちゃ!
そしたら「何もしないで帰っても出張費はかかるんですよ」と鍵屋さん。
なんですと?
それはおいくら支払えば?と尋ねたら「8,000円」と。
…………….(・_・?)
やー、すごいねー、すごいシステムだなー、うまくできてんねー、
だってね、だいたい鍵屋を頼むなんて
緊急を要する人達に決まってるでしょ。
だから大抵は現場でごにょごにょ言われても、
「あーもーいーです、それでいーから。
 とにかくココを早く開けてくださーい!」
ってなると思うのよ。
また別のとこ探すとか、エネルギーも時間も要るし。
でも私はここで腹をくくったね。
もう最悪は夕方まで今日は何も出来なくても仕方ない。
部屋に入れたら徹夜も覚悟だ。
それでなんとか明日の朝の搬入までに間に合わせようと。
だから、帰ってもらおう。
もちろん出張費なんてお支払いいたしません。
そーんなことひと言も電話で問い合わせた時に言ってなかったし。
というわけで、
事務所に電話を繋げてもらい、所長さんと直接お話させていただきましたが、
これが全くヒドい話で。(もう詳しくは書かないけども)
最後は大声で怒鳴ってしまった。久しぶりに。
近所中に響いたんじゃなかろうか。
じょーだんじゃないよと怒ってる私の声が。ははは。(←今だから笑える)
でも鍵屋さんが大人しく帰ってからドッと落ち込む私。
だって一番悪いのはこの自分なんだもの。
すでにたくさんの人に迷惑かけて。
これじゃ鍵屋に八つ当たりしているようなものだ。かっこわるすぎる。
なんだか恥ずかしいな。しょんぼりだよ。
なんだってまたこんなタイミングでこんなことが。
あさってから個展だというのに。
いちらーさんたちに合わせる顔なんてないよ…….
そこでさよちゃんが、
「もうこうなったらゆったりかまえてとりあえずうちにきませんか」
と言ってくれたので、そうすることに。
夕べからちゃんと眠ってないし、お風呂にも入ってないし。
疲れてイライラしてるんだろうなーあたし。
こんなことではいいアイディアは浮かばない。直感も受け取れない。
いつでもカンタン。同じこと。
自分の状態を整えておかなければ、愛とは繋がれない。
困った時ほど、このことは重要になってくる。
休もう!
というわけで、さよちゃんちへ。
お風呂に入らせてもらって。
美味しい夕食も作ってもらって。
一応念のためもう一軒、新しい鍵屋さんもみつけてもらって。
(ここはおじいちゃんがひとりでやってるような小さな町の鍵屋さんで、
 電話の感じはとても信用できる印象だった。10,000円で開けてくれるって)
夜。
やっと不動産屋さんから電話。とても申し訳なさそうに。
….嫌な予感。
「大家さん、たまたま東京にいらっしゃらなくて。 
 今夜は長野へいらっしゃるそうです」
だから!なんでよりによってこんなタイミングでこんなことが!って!
わたしもぉ夕べからずーっと思い続けているのよ!( ̄◇ ̄;)
また癇癪を起こしそうになりながらも、
仕方ない。今すぐ帰って来いとはまさか言えず。
でももう今から鍵屋さんを頼むには遅い時間だし。
気づけば電話口で、
「実はあさってから個展で、搬入が明日で、作品はみんな部屋の中にあって…」
と、言ったってどうしようもないことを不動産屋さんに向かって喋り続けていて。
そうしたら結局、
明日の朝、大家さんの身内の方に大家さん宅に行ってもらい、
鍵を取って来てもらい、不動産屋さんが受け取りに行き、
それを私が不動産屋までもらいに行く…ということになった。
まるで綱渡りのような。
万が一、何処かで誰かが何かの事情で受け取れないなんてことがあるとすると、
大変なことになる。
個展は、初日にオープンできない可能性も。
予約のお客様はたくさんいらっしゃるのに。
なんてことだ。
もう泣きたい気分。 今夜眠れるかしら。
もうその晩はさよちゃんちに泊めてもらうことにしたので、
はー、とか思いながらしょんぼりしていたら、
いきなりさよちゃんが、
「いちごさん、シャボン玉やりません?」とニコニコ顔で、
さっさとひとりでベランダへ出てシャボン玉遊びを始めた。
それが、
あまりにも奇麗で。 
sunday-4.jpg
夜のネオンに照らされながら、ふわふわ都会の風のなか。
sunday-5.jpg
虹色のシャボン玉。
sunday-6.jpg
私の個展のタイトルは「ニジヲクグル」だったことを思い出した。
それから、
今回の展示作品の中で一点だけ、
シャボン玉を被写体に撮影した作品があることも。
その瞬間「撮りたい!」と思ってカメラを掴んで私もベランダへ。
何度も何度もシャッターを切った。
すごく楽しかった。
この時ほど強くカメラに助けてもらったと実感することも珍しい。
ちらっと昨日の朝、
出掛けにカメラを忘れて「いいや」と思っちゃったことを思い出した。
あそこで引き返そうと言ってくれた人に、改めて心から感謝した。
もし今ここでカメラを持っていなかったら、
私はどうなっていただろう?
こんなに早く自分の真ん中に戻って来れただろうか?
不思議だね、人は、
楽しさが心の真ん中に戻ってくると、
一緒に強さも戻ってくるんだよ。
だから落ち込む出来事に出会ったら、
まずは楽しいことを探さなくちゃ。
それが一番先にやるべきことなんだ。
充分に心を整えてからでなきゃ向き合えない。
解決できない。
勝てない。
何事も。
私はその夜、
おまじないをひとつしてから眠りについた。
もう心は平穏を取り戻しているから、
この魔法はきっと効くだろうと思いながら。
翌朝、夢のように美味しい朝ご飯を用意してくれたさよちゃん。
美味しく元気に食べたあと、出発。
不動産屋さんからは、
「確かに今鍵を受け取りましたよ!」という連絡も入って。
不動産屋さんで合鍵を見た時、私は泣いてしまった。
張りつめていた糸がぷつんと切れたように。
sunday-7.jpg
なんと驚いたことに、不動産屋さんももらい泣きしていた…..
「よかったですね、個展、大丈夫ですね」と言いながら。
(普通ここは怒られるところだろうにね。こんなに迷惑かけちゃって)
記念に個展のDMハガキを差し上げたら喜んでくれた。
金環日蝕の写真だったので。
二日ぶりに入ったアトリエは、なんだか違う人の部屋みたいだった。
なにも変わってないはずなのに。
全然知らない部屋みたいだった。
それからものすごい集中力で最後の仕上げを。
間に合わない作品はギャラリーの中で飾り付けながらやろうと思い、
出来ることを出来るだけ頑張った。
3時間押しで搬入作業開始。
おのせちゃんが来てくれた! 心強い!
夕方になったら、たくちゃんも来てくれた。ぐんぐん進む個展の準備。
18時になって。
ありんこパーティの始まり。(←小さなオープニングパーティ)
パーティ中も、来てくれた仲間と喋りながら、
プライス表を作成したり、間に合わなかった細々とした作業をしながら、
忙しく手を動かし続けて、やっと終わった!
これで明日から個展スタートできるー \(*^▽^*)/
私はね、思いましたyo。
きっと運命の新しい扉が開いたんです。
新しい扉はね、
古い鍵では開かないんですyo。
そういうサインだったのだと。受け止めて。
どんな物語にしたっていいでしょ。私の、自分の、人生だもの。
たしかにあれから私は、新しい道を歩き始めていると、
そう実感している毎日なのです。
ほんとうです。
sunday-8.jpg
こうして幕を開けた今年二回目の個展「ニジヲクグル」は大成功。
助けてくれた、たくさんの皆さんのおかげです。
次回のエッセイでは、
個展の模様や出展した作品たちを写真と共に紹介しますね。
(待っていてくださった皆さん、ご報告が遅くなってしまってごめんなさい)
みなさんは今日のエッセイを読んで何を感じますか?
「なんだよ、魔法使いなら、
 ちちんぷいぷい鍵のひとつやふたつどうにかなるだろう」
そんなふうに思いますか?

もしそんなふうに思う人がいるとしたら、その人は、
魔法がなんであるかを知らない人だと私は思います。
魔法を知っている人にはおわかりでしょう。
今日書いたエッセイのどこに、魔法の使い方が書いてあるのか。
私が実際に魔法を使ったのは、
いったいどこだったのか。
いくつか書いてありますyo☆☆☆(^ー^)☆☆☆
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