苺狩りデビュー(たびのおはなし3)
愛知に住む師匠のおねぇちゃんの企画で
みんなで苺狩りをしようということになった。
場所は静岡なので、
私と師匠は東京に帰る途中、高速のサービスエリアでおねぇちゃんと合流。
実は、はじめて。苺狩り。
旅の間、ずっと晴れで暖かかったけど、この日は雨で寒かった。
私の心も寒かった。
すっかり盛り下がる。
師匠に
山小屋計画はやめたい
と密かに打ち明けたら、口をあんぐり開けたまま
信じられん
という顔をされた。
ああ(泣)無理もない。
もういろんな人にお世話になりますと言ってしまったのに。
やめたい理由は、「怖い」という、たったそれだけなのだ。
暗い心のまま、苺狩りの場所に到着。
真ん前は、海。
へえ、海の前で苺は育つのかあ、と驚く。
ざると練乳を手渡されて、いざ開始。
一個食べてびっくり。
うっまぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ
なんじゃこりゃ?
そっか。「採れたて」ってやつか!
こんな苺、食べたことないっていうくらい美味しい。
しばし山小屋のことは忘れて、ひたすら没頭。
と、
間違えて、すっごく小さな青白い苺を摘んじゃった。
あぁぁーごめんなさい
と思って、いったんは土の上に置いたけど、
摘んだ責任を感じて、ぱくっと食べてみたら。
すごく美味しかった。 私好み。
そういえば、
バナナでもトマトでも桃でも柿でも林檎でも。
私はなんでも青くて固いのが好きなんだった。
赤く、甘く、熟しているのは嫌いなんだった。
それからというもの、私はピンクの苺(熟す手前のもの)ばかりを食べた。
それを見たみんなは最初「え~っ?」と驚いていたけど、
試してみたら「なるほど」という感じで、みんなもピンク苺を食べていた。
はじめてもらう、最大の苺パワー。 採れたてパワー。 土のパワー。
年の初めにこれは….。
深い意味を感じずにはいられない。
宇宙からのエールか。
だって私の名前は、いちご。
今年は特別な予感がする。
静岡をあとにする頃、また心に戻ってきた、山小屋。
どうしよう。
どうしようか。
だけど怖さがなくならない限り、無理に動いたってうまくいかない。
天使に祈ると、また驚くような解決策でも教えてくれるんだろうか。
首をかしげたまま、帰京。
汚い空気。
それでも大切な、私の暮らす場所。 また始まる、いつもの日常。
ただ、
あたまのなかには、山小屋。
あの、鬱蒼とした、
目には見えない世界の、息遣い。
もう戻れない。
見てしまったあとでは。
どうしようか。
こんなことになるとはまさか、思わなかった。
助けて、と叫ぶしか、 もう。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。