山小屋へ 4

ひどい気分の夜を越えて、朝が来た。
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おそるおそる、部屋中を見てまわる。
いたいた…
まだ少し。
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暗い気分になる。
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もっと入ってきたら困ると思い、
怖くて窓ちょっとしか開けられない。
せっかく空気のいいところに来ているのに…
朝の風を部屋に入れることもできない、絶対どこか大きく間違ってる私。
(情)
だけど小さなパニックに襲われて、今は冷静にモノを考えられない感じ。
とりあえずシャワーをあびようと、浴室のドアを開けたら、
ひゅ~っと小さな蛾が飛んで、あああ…と泣きたくなった。
しゅんとした心で朝ごはん。 水と、桃一個。
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それから人形を創ろうと思い、テーブルの上に道具をセットした。
ほぼ出来上がった最初の一体を組み立てて置いたら、
なんか一人じゃないような気がして
ちょっと元気になる。
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予定では、朝近くを散歩して、外で制作をしてとか、
いろいろ思い描いていたのに、どれもまったく無理。
窓をほとんど開けていないので、
部屋の空気が淀んでいる。
気分も淀む。
しばらく創って、手を止めた。
こんなふうにここで創り続けても、だめだと思って。
「こもる」の意味が違う。
粘土が乾く間、瞑想をすることにした。
目をつぶると、すぐに土のパワーを感じる。
私は都会のマンションの10階に住んでいるので、
ほとんど大地のパワーを忘れて生きているんだ…ということを思い出す。
無数の生き物がうごめいているのも感じる。
私は、
ひとりじゃない。
ここにはたくさんの生き物がいる。
私も一緒に、生きている。
地球を、感じる。
昨夜のことを思い出し、悲しく、苦しくなった。
これからどうしたらいいだろう?
思いがそこまで辿り着いたとき、声が聴こえた。
「では、どうしたい?」
そう。 そうだった。
どうしたいか、それが肝心。 自分で決めなくちゃ。 次へ進めない。
私の一番の希望は、
もうこの手で何も殺したくない、ということ。
そうするための方法を教えてくださいと、大いなるものに問いかけた。
すぐにヴィジョンはやってきて、
ゼラニウムの鉢植えを部屋の中に置きなさい
守りなさい
それを知らせなさい
言葉の意味が繋がるまでに一瞬、間があったけれど、
…..わかった。
ここは、人里離れた山のなか。
車もない。
電波も届かない。
ゼラニウムは買いに行けない。
ただ、それが
何を意味するのかはわかったので、なるほどと思い、
心が落ち着いてきた。
(後から思ったけれど、どこか近くに自生していたのかも。
 都会暮らしだと、すぐに「買う」ことばかり考えてしまうけど)
やはり、殺虫剤を使うのは違うなと思う。
自分の身体にもよくないはず。
もちろん、地球にも。
無農薬野菜を食べながら、自分で薬を撒いてるなんて。
生き方がとんちんかんすぎる。
きっとゼラニウムは虫除け効果がある植物なんだ。帰ったら調べよう。
そういうものを部屋の中に置いて、
自分の境界線を引くこと。自分の領域を「守る」こと。
そして、
それを外に対して「知らせる」こと。
ここから入ってくるなと、警告すること。
これは絶対大切だとわかった。
私はそれをしなかった。
いきなり他の領域になんの知らせもなく入り込んで、自分の都合を押し付けた。
これでは自然と共存していけるわけがない。
このことは、都会の暮らしも一緒。人間の社会生活もまったく同じだと思った。
ここからが、森の学校の授業の始まりだった。
夕方になったら、師匠の友達が集まり始めた。
きっと師匠から聞いたのだろう、虫除けスプレーとか、蚊取り線香とか、
いろいろ持ってきてくれた。
蚊取り線香はいいな!と思った。
新田ちゃんは山男。 ひとりでテントを張って山の中に泊まっちゃう人。
たくさんのことを教えてくれた。
まず蚊取り線香に火をつけたら、部屋を閉め切っておけと言われた。
ゼラニウムの代わりだ….
(これも後から思ったけど、
 虫除け効果のあるアロマオイルを焚くとか、煙の出るお香でもいいな)
そうすれば虫は勝手に逃げていく、と。
なるほど!これが「守って、知らせる」ということだな!
でも閉め切ったら逃げていけないのでは?と心配して尋ねたら
「大丈夫、人間にはわからないような隙間からちゃんと出ていくから」
という答えが返ってきた。
はっはぁ…なるほど~
秘密のパスがあるんだな…. 
秘密のパスを持つこと。
これは私たち人間にとっても大切なことだ。
特に、心のパス。
いざというとき、逃げ切れる、秘密の小径。
大いなるものと瞬時に繋がる、あの、道だ。
師匠も、師匠ファミリーも登場して、
お馴染み、お寺の住職「若さん」も登場で、
バーベキューが始まった。
燃え盛る炎を見て、自然界の不思議を思う。
新田ちゃんは、残ったタバコをバケツの水につけて、
茶色くなった水を、小屋のまわりにぐるりと播いた。
こうすれば蛇やムカデが来ないから、と言いながら。
なるほど。(←もう私はこればかり 笑)
守って知らせる、だ。
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楽しい宴も終了して、
残った私と師匠と新田ちゃんと若さんで
少し離れた広場へ行った。
星が!きれい!
天の川が見えた。
大きな流れ星も。
ここにぽつんとひとりで夜中に座り、
星や月の下でひとり瞑想でもできるようになったら、
私も一人前だな、なんつって思ったけど。
ちょっとまだ先になりそう…へへへ(苦笑)
夜中0時をまわったころ、みんな山を下りていった。
また、ひとり。
でも昨日と何かが違う。
部屋のなかに虫はいない。
外からちょっと遠巻きに、みんな私を観察している感じがする。
みなさん、お騒がせしてごめんなさい。
順番間違って、挨拶が遅れてしまい、大変失礼いたしました….
私はしばらくここにお世話になります、都会からやって来た者です。
眠る前、お祈りをした。
どうかこの場所の生き物みんなとうまくやっていけますように
でも
虫は恐いので、部屋の中には入って来ないようにしてください
東西南北、四方向に大天使を配置して
小屋を守ってもらうようにお願いした。
眠りに落ちる寸前、
小屋全体がぽぉーっと白く光っているイメージが見えた。
そういえば、若さん、
ロータスの話をしてくれた…
蓮は、泥水に咲く花。
澄んだ奇麗な水のなかでは咲かない。
泥は、私たちの心。
泥にまみれているからこそ、
私たちも美しい花を咲かせることができるのだ、と。
私のなかの、心のロータス…
一輪、咲いただろうか。
こんな、こんな、
泥水のなか…
                          (続く)

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