奇妙な5日間 (2日目の夜と3日目のこと)

写真家であるさよちゃんのパパが東京に出てきていて、
三人で車で奈良まで行くことになった。
パパ、初対面だったけど、写真の話で一気に心近づく。
私がカメラマンと話をする場合、
なにいってっかわかんねーよと思うタイプと、
スッと深みまで入っていけるタイプと
大きくふた通りに分かれる。
中間はいない。
さよパパは、後者のタイプだった。 よかった。 仲良しになる。
途中、中津川という場所で高速を降りて、夕飯。
魚料理がめちゃうまなお店。 感動する。
こんなところまでやってきて、あまり馴染みない人達と、
こんな美味しいものを食べてる自分が不思議だった。
車で走っている間も、ずっと不思議な心でいた。
どんどん、どんどん、進んでいく、なにか。
ちょっと立ち止まって、落ち着いて、せめてあのことだけでも確かめたい
という思いはあるのに、止まらない。 止まらない。
びゅんびゅん進んでしまう。
この加速は怖いほど。
何か大きなチカラに、今押し流されている気分。 抵抗できない。
ひとつの場所に向かっているようだ。 それはいったいどんな場所だろう?
今あるいろんなことが、壊れようと、無くなろうと、
とにかく行かなければならないんだな… それはもうわかった。
ひとつ気掛かりなことがあるのに、それすら確かめることができないなんて。
でもマチルダの答えは、ここのところ、たったひとつ。
Trust
目の前に起る、ひとつひとつのことを信じてゆこう。 それでいいんだろう。
よくわからないけれど、今は時間がないのだ、たぶん。
確認する時間も惜しいほどに急がなければならないんだ。なんらかの理由で。
次の場所へ。
天使の働きを信じよう。
夜中に奈良に到着。
さよパパは近所に呑みに行った。げんきだー(笑)
私とさよちゃんは、スーパー銭湯へ行く。
虹の湯…  虹。 マチルダ!と心のなかで叫ぶ。 すてきー
いろんな種類のお風呂がたくさんあって、はしゃぐ。
全部試さないと気が済まないので、いろいろ入る。
やっぱり露天は気持ちいい。
さよちゃんとお風呂に入ってる時、またまた不思議な気分になる。
なんで? わたしこんなことに。
これからいったいどこへ?
やっぱり進んでる。 すごいスピードにのってるのがわかる。
目を閉じると、ジェットコースターに乗ってる気分だ。
さよちゃんちに戻って、おやすみーと寝る準備。
ちらりと、持ってきたえすみくんのCDを見る。 けど、聴くのはやめる。
なんとなく。
コトンとねむり、あっという間に朝。
散歩に出かける。
近所の神社や、森の小道や、大切な風景のある場所など、
さよちゃんのタイムトラベルに一緒に連れて行ってもらった。
心の秘密を見せてくれたみたいで、すごく嬉しかった。
ふと見ると、さよちゃんが5才くらいになっていて驚く。
案内されるままにずっとついて行く。 どこまでも。 よく歩いた。
では、室生寺に行きましょう、ということになり、車で出かける。
行く途中、さよちゃんお薦めのおむすび屋で、
いろんな種類のおみすびや卵焼き、コロッケなどを買って、
景色のいい所で食べようねーと言い合う。
なのに、私は待ち切れなくて、一個、食べちゃった。(笑)
室生寺は深い山のなかにあって、近づくにつれ、私の心はしん、となった。
急な石段を上って、奥の院を目指す。
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途中、3回くらい休む。 体力落ちてんなー。 ジムさぼってるから。ぷぷぷ(笑)
やっとの思いで到着。
ふたりではぁはぁ言いながら、縁側みたいな場所で休憩。
いろんな話をしたあと、さよちゃんに「天使のカードをひきなよ」と言った。
なんとなく、今ひいたらいいような気がして。
一瞬ためらいが見えたけど、彼女は思いきって一枚…
あ!と小さく叫んだ私を見て、驚くさよちゃん。
カードの意味を知って、なお驚くさよちゃん。 すごーいっ 
すごい天使がきちゃったよー
ふたりしてものすごいハイな気持ちになる。
いつだって宇宙のタイミングは完璧だ。 しみじみする。 
そこへあるご夫婦が到着。
ちょっとだけ言葉を交わして、私達は「お先に」と帰ることに。
少し行ったところで、
お線香をあげていこうということになりロウソクを買ったりしていたら、
さっきのご夫婦の奥さんの方がパニック状態でいきなり現われた。
旦那様が急に具合い悪くなったとのこと。
えーっ!
とびっくりして先ほどの場所に引き返す。
ご主人は、真紫色に唇が変化して倒れていた。
さよちゃんは、昔ナースだったので、てきぱきと脈をとったり、
ズボンのベルトを緩めたり、足を高くして寝かせたり、いろいろ動く。
あの時、さよちゃんの頭にナースキャップが見えたねー(笑)
救急車も呼んだ。
私はどうしていいかわからず、大天使ラファエルを呼ぶ。
片手に石を持って。
やがてレスキュー隊員が、死にそうになって到着。
担架を担いで、あの石段を急いで上ってきたのだ。
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笑い事ではないけれど、私は心密かにツボる。(笑)
今目の前で起ってる珍事件が、なんだかおかしくてたまらない。
もう、私がおかしく感じてる時点で、
「よくない」ことが起きてるんじゃない、だからこの人は助かるだろう、
という確信があった。
そして、担架に乗せられているところとか、こっそり撮ったりした。
やっぱりこんな時写真を撮ったりしている自分はヒドイ人間だな、と
ちらりと思った。 そう。私はヒドイ。
担架を運ぶレスキュー隊の姿が小さくなってゆく…
あのままあの石段を降りるのは、大変だろうな。 
尊い仕事だ…
人が人を助ける、ということ。
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室生寺は、女人高野山と呼ばれる場所。
こんな所の奥の院で人命救助に関わる私達は、なんだかすごいねーと
さよちゃんと笑いあいながら下まで降りた。 帰りはあっという間だった。
川原でおむすびを食べた。 食べ始めてからお腹ぺこぺこだったことに気づく。
気持ちいいー
さよちゃんとふたり。 深い、山のなか。
次に、長谷寺を目指す。
ここもこれまたすごい場所だ。
「苺さん、驚くよ」と笑顔で言うさよちゃん。
「なにが?」と聞こうとしたけど、
その前に発見して、ホントに驚いた。
遥か続く石段と鳥居…  わあ…と。   言葉も出ない。
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ゆっくり上る。
本殿にある金ぴかの大きな仏像に目が釘付け。
長い時間、じっとみつめる。
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あの目。 仏像の。 
あの目が見ているあの場所は。
どこにあるのだろう?
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それから明日香村へ移動。
でも今日はもう閉鎖していて、石舞台は見れないので、
もう一度違う日に来よう、ということにして、
その後、大阪まで車を飛ばして、
さよちゃんが好きだというもんじゃを食べに行った。
ぱくぱく食べながら、いろーんな話をした。
ちょっとづつ、さよちゃんの真ん中に近づいていってるのがわかる。
人と人が交わっていく過程を、スローモーで見ている感じ。
こんな時間、いいなあと思う。
私は、パッとくっついて、パッと離れてしまうパターンが多いので。
ちょっとこんなことは珍しい。
さよちゃんとはへんてこりん。
だからこそ本物の縁を感じる。
ああ、不思議なことになった。
ほんとに。
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奈良へ戻り、またまた虹の湯へ。
温泉は生き返る~(ほへ~)
出てから、
前の晩にさよパパが行った呑み屋に行こうということになり、
ふたりで出かける。
雰囲気のいい、山小屋みたいな場所。
気分良くカクテルなど頼んだりして。
スピーカーから流れてくる音楽を聴いていたら、
なんとなく、えすみくんを思い出す。
さよちゃんに
「えすみくんの創る音に似てない?」と聞いたら
「うん。私も今そう感じてた」という答えが返ってきた。
今ここに、えすみくんがいるみたいだね、と言い合う。
うん。
えすみくんも一緒にいるみたい。
ふと、さよちゃんが
「外では今、徳田さんが電話してるような気がする」
と言ったので、笑った。
あー、
いつも携帯をお守りのようにずっと持って忙しそうにしてるからねー
ヒロさんは…   
独特な彼の後ろ姿が浮かぶ。 電話してる時の、あの感じ。
うん。
ヒロさんも今ここにいる気がするねー。
だけど、たったおとといみんなで一緒にいたはずなのに、
あの海へ行った日がもう何年も前のことのように感じる。
もうずいぶん長いこと、えすみくんとヒロさんには会ってないような気がする。
すごいスピードで進んでいるのだ、やっぱり。
なにもかも。
過ぎたことは、ぐんぐん遥か後ろへ行ってしまう。
なにもかも。
なにもかも。
夜中に帰る。
眠る前、またえすみくんのCDをちらりと見る。 けど、聴かない。
どうして私は聴けないだろう? せっかくもらったのに。
いつまでたっても触れない。 なぜか、CDのまわりをぐるぐるしてるだけ。
ためらいの理由がわからない。 自分では。 さっぱり?
                         (4日目に続く)

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