和歌山で 5

イエスと言ったのは、わたし?
…….そうだ!
イエスと言ったのは自分じゃないか!
別に嫌がる私をアスパラさんが無理矢理ここまで連れてきたわけではなかった。
「ぴんときた」というアスパラさんを信じて自分の意志でやってきたのは私だ。
全部自分で決めたこと。
ということは、
これはアスパラさんの問題じゃない。
私の問題だ。
よし、わかった。
ならば解決に向かって全力を注がなければ。
人のせいにしていたので、自分が動けなかったのだ。
だからとても苦しかったけれど、もう大丈夫。
「ではたった今から最短距離でいける解決に向かう第一の扉はどこですか?」
と尋ねた。
「会場へ戻りなさい」
と虹色の答え。
私はアスパラさんに会場へ戻りたいことを告げた。
そしてギャラリーAで、しばらくひとりにしてもらった。
部屋の真ん中に立って瞑想し、東西南北の神様に挨拶し、
和歌山の土地のスピリットに感謝を捧げ、
ひとりで、小さな祭典を催した。
たくさんの天使を呼び寄せて!
一緒にダンスを踊った。
たくさんの魂をここに誘導し、もっと快適に、楽しく踊るためには
いったいどうしたらいいでしょうか、と心で尋ねながら。
そうしたら、
高い吹き抜けの会場の上方部から、ある絵が降りてきた。
(でもいくらなんでもそれは…と思うものなので
 実際に展示するかどうかはもう少し考えますが)
最後に、
東京へ戻ってからもいつもこの部屋と私が繋がれるような
おまじないをかけて、会場を出た。
ここでやるのだ、ということだけは、  これで決まった。
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外で待つアスパラさんに向かってにっこり笑いかけたような記憶がある。
その後、会場すぐ目の前の神社へ。
ふたつ並んでいる。
まずは小さい神社へ。
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ここには安産の神様がいるらしい。
素晴らしい個展が「生まれるよう」お願いした。
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次に大きい方へ。
ここにはなんとも言えない樹の根っこが祀られていた。
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持って行った水晶をかざす。
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ちょっと樹に触ったら、びりり!ときたのでびっくりした。
遠くでお宮参りの赤ん坊の声。
生まれる、ということ……
その声を聞きながら、高台へ。
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個展会場の真上に太陽が輝いている。
よし、これを答えとしようと、思う。
きっとだいじょうぶ。
天使のダンス。
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「次はどうしましょう?」とまた聞かれたので、今度は元気よく
「お城へ!」と答えた。
「そうしましょう」と言ったアスパラさんを見た時、初めて
この人は可愛いな、と思った。
私は変化したのだ。 
自分が変われば見えるものが違ってくる。
変わるなんていつだって、ほんの一瞬だ。 
瞬きひとつするくらいの、時間があれば。  人は変われる。
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和歌山城。
「暴れん坊将軍がいたところですよ」とアスパラさんが教えてくれた。
暴れん坊… というところで、ちょっと笑った。マチルダと。
マチルダが、私のイメージをよこしてきたので。
城内にはたくさんの展示物があり、
鎧の前では「しかしばかだったよなあ。こんなにしてまで戦うなんて」
と心から思った。
重そうだし、動きづらそうだし。
でも一生懸命さが伝わってきて、
まあ、今の自分も同じようなものかも、と思う。
天守閣に上った時、
「お殿さまはずいぶん遥か遠くまで見渡すことができたもんなんだなあ」
と、しみじみ…
ここでなにを思ったか。 暴れん坊よ。
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お城を出て、公園の中を歩いて行ったら
突然小さな動物園みたいな場所があって驚いた。
ものすごい、この、脈絡の無さ。
でもこれも信号かも、と思って、
私は動物達に心の中で尋ね歩いたね… 
あの、すみません…
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今度この近くで個展やる者ですが。
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どうしたら成功しますかねえ?
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どうしたら?
…羊は冷たい。こっちを見向きもしない…
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ペンギンも。
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ビーバーも。
皆忙しそう。
自分が生きることに一生懸命だ。
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うさちゃん、
個展、どうしたらいいかしら…
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みんなに力を貸してほしいわ…
ちょっとお腹が空いてきました…
アスパラさんがよく行くカフェがあるというのでそこへ向かうことに。
着いたところはとーっても可愛らしい手作り感たっぷりのカフェ。
ちょうど、山の向こうに陽が沈むところだった。
3日間ありがとう。ずっといてくれて、と感謝する。
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店内には、小物やアクセサリーがいっぱい展示販売してあった。
私はチーズケーキを注文。
素朴な味でとても美味しかった。
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そこを後にし、最後に「和歌山らーめんを食べて帰りたい!」という
私のリクエストに答えて、アスパラさんお薦めのラーメン屋を目指す。
途中、事故渋滞。
迂回して高速で市内へ戻った。
ラーメン屋は混雑していて、商売繁盛な雰囲気で、ぱり!としていた。
味は、めちゃうまーーーーーーっ
会場から近いので、
個展に来た人はみんなここにも寄ったらいいなと思う。
もっとおかわりできると思ったけど、一杯だけでやめておいた。
私はすっかり和歌山らーめんファンになったぞ。
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3日間、無事に過ぎた。
空港でアスパラさんとお別れしたあと、
で?展示はどんなふうに?
と、ひとり出発ロビーに座って思い巡らした。
心は、しん、としている…..
その時、
「パンフレットを見なさい」
という声が聴こえてきたので、   見た。  そして、
写真展示用ギャラリーは、Dという部屋だということを知った。
….専用のアトリエがあるじゃないの。
どうしてアスパラさんはDではなくAを?
ちょうどアスパラさんから
「お気をつけてお帰りください」とメールが入ったので、
「ギャラリーDが写真展示室なんだね」と返信したら
「え~~?Dは写真ギャラリーだったんですか?
 気づかなかったです」
…..このメールを見た瞬間、再びマグマのような怒りが。
おまえふざけるな
気づかないという日本語使うな
そんなレベルの話じゃないだろ
個展を開くって
客を呼ぶって
主催をするって
気づかないという言葉が通用する世界じゃないだろ
おまえは即刻出てゆけ!
その言葉をこれからも使い続けるなら、今すぐここから立ち去れ!
と、次から次へと。
沸き上がるままに。
怒りを感じ続けて。
なにもかも通り過ぎて、再び心が静かになった時、また
虹色の、声。
イエスと言ったのはあなたよ
ああ。
…そうだった。 イエスと言ったのは私。
アスパラさんを信じきってすべてまかせてここまで歩いてきたのは
自分の足で、だった…
誰のせいでもない。
さっきアスパラさんに向けた怒りの言葉は
全部自分への言葉に変わった。
私は甘い。
私は甘い。
甘過ぎる。
心の短剣を引き抜き、自分の真ん中に突き立てた。
関西空港のロビーで。
細く
長く
叫び声をあげて、死んでゆく
あまいあまいわたしのこころ
二度と現れるな、と思う。

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