和歌山で 2
朝、ぱっと目が覚めて、お風呂。
それから、
朝食を食べにダイニングへ行く。
バイキングなのでちょっとずついろいろ取る。
茶粥のところに「紀州名物」と書いてあった。
はじめて。 茶色いお粥。
めちゃうま。
大盛りで食べたかったけど、前の日アリスが
「苺さん、車酔い平気ですか?
明日は高野山までの道、くねくねカーブですから」
と言っていたことを思い出し、
調子にのってたくさん食べるのはやめる。
車酔いはしないけど、くねくねは、どうなるかわからないから。
アスパラさんがホテルまで迎えに来てくれて、
九度山という駅まで車で向かった。
その名前ちょっと不思議に感じて、
「なぜ9回?(九度)」とか思いながら。
アスパラさんの車は、ウィンカーを出す時にぴこぴこと、
誰かがどっかからピコピコサンダルでも履きながら歩いてくるような音がするので、
曲ったり駐車するたびに私は心密かにツボッた。(笑)
どうしてアスパラさんはこの音を聞いても可笑しくならないんだろうか?
普通に毎日聞いてるなんて…
やっぱり人の感覚はそれぞれで不思議だな、と思う。
私はこの音に最後まで慣れなかった。 ずっと可笑しかった。
笑わないで我慢したけど。
でも一番不思議なのは、この車を作った人。 なんでこんなウィンカー音に???
和歌山の景色は、どこか、のどかでなだらかで、山が多くて、よかった。
ここはけっこう好き、と思った。
駅でアリスと合流。そこから3人で高野山へ。 私は初めて。
どきどきする。
なんだろう?この雰囲気。 どこにも通じるな、これ、とか思いながら、
山へ入ったら私は無口になってしまった。
途中、少しだけ屋久島を思い出した。
そしたら思い出さなくてもいいことまでついうっかり思い出してしまって、
意外な方向に自分の心が動いてびっくりする。
その時、ちょうど着いたのでよかった。 車から降りたら現実に戻った。
くねくねは全然平気だった。(でも茶粥はおかわりしなくてよかったかも)
着いてみて。
これまたびっくりたまげた。 奥の院という所からまわったのだけど。
これは、いってみれば「墓参り」じゃないか。
….なんだって、また。 こんなところに? 私が?
最初どうにも不思議だったけれど、歩いているうちに「もしやこれは…」
という思いに当たった。
なるほど。
私の心にあるのはずっと、今つくりかけの人形の顔。
「ものをつくるって」という心から全てを眺めているところ。
なので、たくさんそれについての答えがやってくる。
誰といても。
何を見ても。
どれを食べても。
どこへ行っても。
歩いていて印象的だったのは、
まず入り口にあった慰霊碑。
たくさんの白い手。
苔の間から滴る水が凍って形創った自然の芸術作品。
まあるい形の氷。 氷柱になってる箇所もあった。
氷柱を見たのは生まれてから2回目か3回目、まだ。
それを言ったら目をまあるくするアスパラさん。
「うそぉ」と言っていた。
嘘じゃないよ。
きっとあなたの方が私よりたくさんのことを知っているんだよ、
と心のなかでつぶやく。
だけどたぶん私はあなたの知らないことを知っている。
人はそれぞれ。
ひとりひとりみんな違うんだよ。
そしてその「違う」という意味においては、みんな誰も
同じなんだ。
なんだかものすごい木をみつけて、私達は「ゴッホ」と名付けた。
ゴッホの描く杉にそっくりだったので。
たくさん歩いたあと、
お茶処があったので休憩した。水が違うのかな。すごく美味しい。
茶釜も素敵だった。
高野山。
お参りをして、ここは本当に好き、と感じた。 住みたいくらい。
お昼は精進料理を食べた。少し味が濃かったけれど、まあまあな感じ。
食前酒の果物のお酒が美味しかった。
お酒呑むならやっぱり最近はこういうのちょこっとっていうのが一番。
その後、女人堂と金剛峯寺に行った。
途中、あっと思う看板を発見。
即座に「やっぱり」と声に出してつぶやいてしまった。
墓参りのわけは… さっき思い当たったことは的を射ていた。
「生きる努力をすることが、先祖の供養」
その看板にはそう書いてあった。
私がなんで今この場所で思わぬ形で「墓参り」しているのか。
個展の会場を見に来ただけのはずが。
人形制作の答えを探しているはずが。
なんで墓参りに結びつくのか。
合点がいって、すっきり。 ものすごく晴れやかな心になった。
目には見えぬ先人達の無数の魂が私を囲んでいるように感じた。
大切なことを教えてくれる声が聴こえる…
ここに言語化できないが。
たしかに感じた。
私が人間としてこの先も頑張って生きていくことが、
ここに眠る人達の慰めになるんだなと、わかった。
よし。 人形を創ろう!写真を撮ろう!個展を成功させよう!と思う。
山を降りる前に、お薦めの胡麻豆腐屋さんがあるというので、寄った。
そしたら。
また、だ。
音が。
私の奥深くが即座に反応し、
アスパラさんの声もアリスの声も聴こえなくなって、
店内に流れる、その音だけ。
気がついたらみんなは食べ終わっていて驚く。
慌てて食べ始めて、
私はうわのそらで「おいしいね」とは言ったものの、
せっかくの胡麻豆腐の味もよく覚えていない。
音のせいで、
どうして私の体(心か?)は時々こんなことになるんだろう。
なんていう曲かなあ
ほしいなあ
そう思っていたらアリスが
「このCDいいですね」と言いながら店員さんに尋ねてくれた。
聞けばお店のオリジナルCDだという。
胡麻豆腐屋の?
どうしてかわからないけれど、売り物のはずなのに、
私達に一枚ずつくださった。
弘法大師さまからの贈り物か?
その音は、もうとても泣きたくなってしまう音で、
本当はわんわん泣きたかったけれど、そうはしなかった。
私にとってはこれが「紀の国の音」だ。
個展開催まで、繰り返し聴こうと思う。
また、くねくね道を降りて、再び九度山駅まで。
もうアリスとはお別れ。 2日間、楽しかった。
この人は、なんというか、
たからもの。
できれば一緒に暮らしたい。(笑)
次に会えるのは個展でか?
アリスは今回スタッフ参加してくれる予定。
感謝の心でさよならと手を振った。
アリスと別れたとたん、雨が。
天候のことを朝ミカエルにお願いしておいたことを思い出す。
1日ありがとうございました、と心の中で深く感謝を捧げた。
帰り道、どんなに長い時間が経っても
西の空だけ明るいままなのが不思議で
「どうして和歌山は日が暮れないの?」
と尋ねようと思ったらアスパラさんが
「今日は妙な日ですねぇ。いつまでも空が暗くならない」
と言ったので、
そうか、今日は特別なんだなと思った。
私達は西へ向かって走っていたのだけれど、その時思い出した。
星の王子様のおはなし。
王子様の住む星はあんまりちいさいので、西に向かってちょっとずつ
自分の座る椅子を動かし続けていくといつまでも夕陽が見続けられる、
という、あのシーンを。
ひょっとして私とアスパラさんは不思議な扉を開けてしまって、
この時、世界には、
和歌山しかなかったのかも。
私達は小さな星の住人になって、
西へ走り続けていたのかもしれない。
だから、いつまでも、
美しい夕方のままで。
西へ、
西へ、
大天使ラファエルの方向、
癒しの方向に、向かって。
このあと私達は4人の天使たちと逢うことに。
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