写真の神様 聖ヴェロニカ

     ヴェロニカ像の前に立った時。 
     私の心は崩れ落ちそうになり、
   大声で泣き叫びたい衝動にかられました。
とうとうローマ!です。
イギリスとは違った意味で、私の心は無口になります。
あっちこっちに天使がたくさんいて、びっくり!です。
30分ほどの間に2ロールも撮ってしまってから、ハッと気づきました。
こんなんではフィルムがいくらあっても足りない。落ち着かなきゃって。(笑)
日本にいる時、天使は私にとって
どこか可愛らしく、優しくユーモラスな印象でしたが、
ここイタリアではとんでもない。
もっと、厳かな深い存在で…  どの天使も、仏像のような印象を持ちました。
私の創ったケルビムを見たら、この国の人は笑うだろう。
笑ってくれればまだいい方で、怒り出す人もいるかもしれない、と思いました。
知らないって、時には怖い。 とても怖い。
心が冷や汗をかきました。ここで知ってよかったです。 危ないところだった!
私は、ぜんぜん違うものを創っていたようです。
滞在途中から、
新しく人形を創りたくて創りたくて、手がウズウズしてきました。
たくさんアイディアが浮かびます。
今、目にしている、感じている、
この天使の精神だけは大切に、でも私だけのオリジナルな天使を
これからたくさん創ってゆこうと思いました。
何を観ても、そのように感じました。
ヴァチカン市国へ入国するのに、1時間以上並びました。
でも、広場をぐるりと円形に囲むたくさんの聖人達の像を見ていたので、
飽きなかったです。
初めに、クーポラへ上がりました。
階段とエレベーターがありますが、迷わず階段を選びました。
螺旋を上っていきます。
だんだん狭くなって、とうとう最上付近では、人がひとり、やっと通れるほど。
しかも斜めになっている…
てっぺんからはローマの街が一望できます。
ヴァチカン市国内の庭園も素敵!です。(ひとつ、とても好きな滝があって!)
ここまできて、私にはとても気掛かりなことがありました。
売店を。 みつけたい。
ある人に、
ヴァチカンのサンピエトロ大聖堂へ行って、ヴェロニカに会うのが夢なんです、
と言ったら、
「では、必ず売店に寄りなさい。螺旋階段を上っていくと、
 小さな売店があるから。ほとんどの人は気づかないで、皆降りてしまうけれど
 あなたなら大丈夫。すぐわかるはず。そこへ行ったら、世界一小さい金貨があるから。
 それを買って身につけなさい。あなたはそれを買わなければならない」
今思えば、それはちょっと変わった日本語だったと思う。 啓示か、何か、みたいな。
その人と話をした時、私はまだイタリアへ行く予定もなく、
いざ行く時になったら、もう一度確認しようと思っていたのですが、
それから数カ月後に、その人は亡くなってしまいました。
今回、いろんな人に尋ねました。 ガイドブックでも調べました。
でも誰も知らない、というのです。 どんな本にも載っていません。
最後は知り合いの編集者に頼んで現地のカメラマンにも情報を求めましたが、
サンピエトロ大聖堂を撮影した人でさえ「知らない」と言うのです。
もうなかば諦めて出発しましたが、現地ではやはり心のなかはキョロキョロです。
そしたら! ありました! ホントにちっさな売店が! 目立たなくひっそりと。
行って納得。あれは確かにみんな気づかないかも。なんかショップっぽくないし。
だいたいそこに辿り着くまでに、階段を上ってゼイゼイハァハァいってる状態で、
誰もお土産屋を探そうとは思えないかもしれない。(笑)
あんなに混み合ってるはずのサンピエトロ大聖堂なのに。
その小さな売店だけは空いているのでした… 不思議な空間です。
私はそこで、最後にひとつ残っていた「大天使ガブリエル」の金貨を買いました。
ガブリエルは芸術を司る天使です。
天使のなかで唯一、女性といわれている天使でもあります。(天使は性別がない)
胸がいっぱいになったまま、いよいよ大聖堂内へ。
ヴェロニカ像には、まもなく遭遇できました。
主祭壇に向かって、左に、位置していました。
風に吹かれて、
キリストの顔が写る布を、持って。
ごめんなさい。
その時のことを、上手に書くことができません。
どんな言葉を持ってしても私の力では無理です。
どのように表現したらいいのか。 わからない。
あんな瞬間、
体験したことがない。
はじめての、感覚でした。
ヴェロニカに会うまでは、目的に到達する意識でいましたが、
いざその前に立ったら、全く逆の意識が生まれました。
ゴールではなく。 そこは、
スタートラインでした。
写真を始めてから10年ほど。 
この膝元まで、ずっとヴェロニカが導いてくれていたことを実感しました。
現在いったいどれくらいのカメラマンがここまで導かれてくるのだろうか。
おそらく、数は多くないと思う。 だとしたら。
なぜ私はここに呼ばれたのだろう。
生まれて初めて、私は自分の運命に対する責任を感じました。
「やることが、あるのですね」
ヴェロニカに向かって、まっすぐ心を飛ばしました。
泣いている場合ではない。もはや感激している場合では。
始まってしまったのだから。
どうかここから先、なんとか天命を全うできるようお導きください、と
一心に祈りました。
そして、
持って行った石とヴェロニカの指輪を、足元に置き、写真を撮りました。
大聖堂の中には、単なる見学者は入れない祈りの部屋があって、
私はキリスト教ではないけれど、
祭壇の前でどうしても祈りの心を捧げたかったので、ひとりで入りました。
祈り終わって部屋を出た時、かちっと、なにかどこかが、
「繋がった」感覚がありました。
心は晴れ渡り、こうして今回の旅の目的はすべて果たされました。
かみさま、ありがとう。
これまで助けてくれた、すべてのスピリットに。 感謝します。

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