ドイツの列車ひとり旅 その7

一人旅六日目の朝。
最終目的地ケルンへ出発☆
一度トランスファー、待ち時間も含めて合計七時間の列車の旅です。
乗り換えるまではうまくいきましたが、ケルンまでの指定席でトラブル発生。
ダブルブッキングです。
ドイツ人のおばさまが怒ってらっしゃるご様子。
先に席についてた私に「あなたお間違いなんじゃ?」とおっしゃってる模様。
え!そそそれはたいへんしつれーしましたと思って慌ててチケット確認。
いやー、ここまでに百万回は確認したはずなのになーと思いつつ…..
あら。大丈夫みたいなんですけど?
で、おばさまにもお見せしたら…….
あら。と。おばさまも困り顔。
でも見せてくれたおばさまのチケットも確かにこの座席番号。
わたしたちわるくなーい。はんにんほかにいるー。でもここにはいなーい。
だからだれにも文句言えないのでした。
先に座っていたのは私でしたが、おばさまが可哀想なので、
すぐ席を立ってどうぞとお譲りしました。
さっきは怒ってたのに、
急に申し訳なさそうにしゅんとなってしまったおばさま。←実は可愛い心の持ち主☆
私は大丈夫ですよー。
すぐ近くの席のご夫婦が手招きして呼んでくださってる!
ここ空いてるからおいで~♪ って。 あそこに座ります。^^
ということでさっと荷物を取って席を移った私。
座席番号は、44番。
思わずふふふと笑みがこぼれる。
4のゾロ目。数字からのメッセージの意味は、
「今あなたの近くに天使がいます」
やたー☆
うれしい。うれしい。
そして無事夕方ケルンへ到着。
まりさんにはタクシーで行ったら?とアドバイスをもらっていましたが、
私は地下鉄でホテルまで行くことにしました。
ところが、とても複雑なトランスファーシステム!
あらー。これはたいへんだわー。
と一瞬くじけそうになりましたが、いえいえ、魔法修行積んできてますから。

しっかりお祈りして「リクエスト」しながら進めば大丈夫!
というわけでスムーズにホテルに着きました。
ところがところが!ここでまたトラブル発生。
バウチャーが無いと泊まれないと言ってるみたい…..
前のホテルでも同じこと言われたなー。
持ってる控えを見せて「これ渡します」と言ってもダメでした。
ここは都会。田舎のようにはいかない様子。
厳しい口調でずっと同じことを言い続けてるフロントの人。
さあ困りました。でももうまりさんの助けは借りないと決めたのです。
思えば、あの旅行代理店の人、ちょっとおっちょこちょいかな?
予約したホテルのバウチャーは無いし。電車の座席はダブルブッキングだし。
(これらの件は帰ってからまりさんへ報告。代理店にクレームつけるわ!
 と言ってくれたのですが。結局そのままに。
 ドイツ語ができない私には自分でどうすることもできませんが、
 バウチャーに関してはきちんと説明を聞けば納得のいく原因がどこかに隠れていそうな。
 そう直感しています。確かな事情がわからないまま帰国したことを少し残念に思います)
困り果てた私。そこで、
マチルダにフロントマンのガイドと直接話してくれるようお願いしました。
そしたらいきなりどこかへ電話をかけ始めた彼。
誰と何を話してるのか。ドイツ語なのでさっぱりわかりませんが。
切ったとたん笑顔で「OK」と英語で言いました。

まあ、よかった。今夜ここに泊まれるなら!
だってもう旅行代理店に料金は支払ってあるのですから。
部屋に荷物を置きながら、ちょっと思いました。
旅の最初、
私の予約した宿泊プランに朝食がついてるかついてないかを知るために
あんなに大騒ぎしたのです。
でももうダブルブッキングだろうがバウチャーなかろうが、
慌てたりしないのです。
小さなことかもしれませんが。私の内部では大きな変化です。
さて。
チェックインも済んだし。まだ外は明るいし。
大聖堂を見学することにしました。
夕食は教会近くに行きたいレストランがあるので、見学したあと食べよう☆
というわけで、再び地下鉄。
実はさっきホテルに来る途中で尋ねたおばあちゃん、
一回間違えて私に教えてくれました。
私は地下鉄だけを使って移動したかったのですが、
彼女は路面電車を利用する方法を私に知らせたのです。
ちゃんと天使にお願いしたはずなのに。
おかしいなと思いつつも、無事ホテルまで到着できたのでよしとしましたが。
ホテルからケルン駅まで行く時、今度は地下鉄だけで移動する方法をみつけました。
(それでもやっぱり複雑な乗り換えシステムでした)
20分ほどでドーム駅到着。
さっきは着いたばかりで緊張していたせいもあるかもですが、
大聖堂がここからも見えるって気づきませんでした。
気づかなかったもうひとつの理由は、……大きすぎる。あまりにも。
いくらなんでもこれは。
見た瞬間、感動というよりは、笑っちゃいました。
教会というよりは、山という感じです。
私の、世界やりすぎナンバースリーに入ります!
(あとのふたつ、マンハッタンのメトロポリタン美術館とベルリンのペルガモン美術館)
けれどやはり内部は素晴らしかったです。
ここを見学するのがケルンでの第一目的だったので、
翌日は朝早くから南塔のてっぺんへ上りました。
160メートル近くある塔の螺旋階段を歩いて上ってゆくのです。
この教会は世界文化遺産に登録されているので、
世界各地から集まってくる観光客で賑わっています。
でも私にはもう二カ所、行きたい教会があって。
そこはどちらも誰もいませんでした。
特に最後に行ったマリエン教会はほんとうにほんとうに素晴らしかったです。
大聖堂の地下にもうひとつ大聖堂があって。
そこでずいぶん長い時間ひとりで静かに過ごしました。
この場所に到着した時、教会の入り口のドアの前で、
空から白い羽がひらひら螺旋を描きながら落ちてきました。
(記念に持って帰ってきた!)
こんな時、
それは、鳥の羽根でしょ?
と思う人と
ハッとして「天使の羽!」と感じる人といると思いますが。
私は後者の方です。
人生を物語にするのが好きなのです。^^
ケルンでは行きたい場所が全部で六つありました。
教会みっつ。美術館ひとつ。レストランとカフェ。
その全てを希望通りまわることができたことにとても感謝しています。
夕食に選んだお店は老舗のレストランです。
この旅最後の夕食です。
ケルン名物のケルシュビールをオーダーしてみました。
ひとりですが、心のなかは「かんぱーい☆」です。
ロールキャベツも注文しました。
ハノーファーで食べた時とても美味しかったので、
メニューの文字を覚えていたのです。
ちゃんとドイツ語でオーダーしました。
すっごくすっごーく!美味しかったです。
あのデミグラソースの味。一生忘れられません。
一生忘れられないといえば、
とうとうみつかりましたよ!ケルンで!黒い森地方のケーキ!
大聖堂の前になにやらびかーっと光るオーラのお店が一軒。
吸い寄せられるように入ったらケーキ屋さんだったのです。
(最初宝石店かと思った。そんな佇まいのお店)
言葉がうまく通じなくて「後で食べに来ます」と言ったつもりが、
なぜかテイクアウトになってしまった。笑
でも!これが大正解。
なぜかというと、後からではもう時間が無くなってしまったからです。
帰りの列車の時刻が迫ってきていました。
ケーキの入った手提げ袋を持ち歩くことになりましたが、これでよかったのです。
宇宙の計画はいつも完璧なのです。
少し時間が足りないかも、とちょっと心配になりながら、最後の美術館を出た時、
ふと通りの向こうを見てびっくり。
あれは….. あそこは…..
昨日おばあちゃんが間違えて教えてくれた駅……
間違いなんかじゃない。
私にとって必要な駅を天使もおばあちゃんも教えてくれてたんだ。
昨日のことはすでに今日の計画の一部だったんだ。
そうわかった途端またなんともいえない気持ちになりました。
地下鉄に乗って、一度中央駅まで戻る必要はない。
このままあそこから路面電車に乗れば、次の駅がホテルのある駅です。
帰りの列車の発車時刻まで、時間は十分間に合う計算になります。
宇宙は完璧なのです。 信じて。任せることができれば。 必ず答えてくれる。
こんなふうにして、
私のドイツ列車のひとり旅は終わりを迎えます。
ブッケブルクに到着した時には夜の20時をまわっていたので、
もうあたりはまっくらです。
お土産と、自分の荷物と、すごい量。重い…..
まりさんの家までにいくつかあるベンチで休憩を取りながら、
一時間近くかけて戻りました。
これまで張っていた気が抜け始めてきていたのか、
途中なんだか急に体の疲れを感じてしまって。
何番目かのベンチに腰掛けた時、
そうだ、ケーキ、と思い出し……
ちょっと味見したい!と思って。元気を取り戻したかったし。
少し食べちゃった。
手づかみで。
ぱくぱくって。
お上品なケーキなのに。
こんな食べ方でごめんなさい。
ああだけど。
なんて美味しいんだろう?
皆さんは美味しすぎて泣いたことってありますか?
私は、
まあいろんな思いが一気に溢れて、感極まって涙が流れたんだろうと思うのですが、
少なくともこの時の涙の引き金は、このケーキの美味しさだったのです。
ほんとうに
ほんとうに
美味しかったのです。感激して泣くぐらい、美味しかったのです。
森村桂さんの言葉を思い出しました。
わたしはひとをげんきにするようなおいしいケーキをやきたい
ひとのこころをしあわせにするお菓子をつくりたい
桂さんもよく「魔法」という言葉を使ってらっしゃいました。
きっと魔法ってどういうものなのか、よくご存知でいらっしゃったのだと思います。
まっくらなブッケブルクの街外れにある車道沿いの街灯下のベンチに座って
ケーキを手づかみで泣きながら食べている東洋人の女ひとり。
時折通りがかった運転中の皆様。私を目撃された方、怖かったと思います。
どーもすみません。
しかしどんな人にもその人の事情(物語)があるものなのです。
お許しくださいませね。
ふふふ。
帰りが遅かったので、まりさんご家族は心配されていましたが、
元気に戻った私を見て皆さん安心してくれました。
ママさんが言いました。
「あなたはやると思ってたわ。思ってたけど。すごいわ。本当にやり遂げたのね」
その言葉を聞いた瞬間、また涙があふれました。
すごくすごく嬉しかったです。
そうです。
わたし、やりました。
この旅で、途中で諦めてしまったこと、できなかったこと、
ひとつもありません。
ただのひとつもありませんでした。
そのことを大変嬉しく、また誇らしく思います。
たくさんのチカラに助けていただいたおかげです。
翌朝、
ケーキの残りを朝食に食べました。
半分無くなってるケーキ。
前日からずっと持って歩いてたからもうぐちゃぐちゃに崩れてるケーキ。
だけどずっと探し求めていたケーキ。
黒い森地方をテーマに作られた洋酒の香りたっぷり魔法の国の美味しいケーキ。
(生クリームにかなりお酒が入ってる。挟み込んであるサクランボも洋酒漬け。
 スポンジ生地はチョコレート味だけど、カカオの味がしっかりしていて、
 全体的に全くといっていいほど砂糖の甘さは感じない。
 レシートを見たら「seit 1855」って印字してある。老舗のケーキ屋さん)
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これは、
私の勲章です。
そう思って、一口ずつ、大切に食べました。
この味を忘れない。
私も森村桂さんのような魔法を使える人になりたい。
人を幸せに。元気にしたい。
美味しい魔法。
食べるおまじない。
まりさんにお願いして、最後に、
私が一ヶ月間キッチンで使わせてもらっていたヘラとまな板をいただきました。
これは、
以前まりさんが住んでいた家にあったものだそうです。
その前はおばあさんが住んでいて。
その方が亡くなったあとにまりさんが引っ越してきて。
キッチンのものはおばあさんが使ってらしたそのままを使うと決めて。
その時からあったものだからそれはかなり古い道具だと思うよ、とのこと。
ふふふぅん♪
きっとそのひとは、魔法使いだわ。
わたしにはわかる。
このヘラを見れば。
魔女のスープを作っていたにちがいない。
くるくるとこれでかきまぜていたんだよ。
まいにち。
まいにち。
秘密の呪文を唱えながら。
受け継いだ私には聴こえる、使うたび。
遠く時空を超えて。その声が。
ぴゅうぴゅう強い風の音とともに。
秘密の、あの…..。
ドイツ一ヶ月間の滞在。
楽しく素晴らしい宝物にたくさん出会いました。
ありがとうございます。
私を支えてくれた皆様にこの場を借りて心からお礼を申し上げます。
私の家族に。
まりさんとドイツのおうちの皆さんに。
マチルダに。
ヴェロニカに。
天使たちに。
ドイツの魔法使いたちに。
旅の途中で出会った全ての人たちに。
日本で私を見守りながら一緒にツイッターを通して旅をしてくれた皆さんに。
このエッセイを読んでくださった皆さんに。
たぶん。きっと。ずっと遠くから見守ってくれていたであろう、あのひとに。
宇宙に!
深く感謝いたします。
ありがとうございます。
ありがとう!!!!!
これでおしまい☆ ドイツの旅のお話。
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ケルン駅に到着寸前。列車の窓から見える大聖堂。
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ケルン中央駅構内から見える大聖堂。
最初に着いて、地下鉄に乗り継ぐ時ここを通ってるはずなのに
その時は気づかなかった。大きすぎたのだと思う。
物事は、
小さすぎても見えないけれど大きすぎても見えない場合があることを知りました。
ははは。
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駅前広場から見たケルン大聖堂。
下の小さな点々が人間たち。
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泊まったホテルの朝食。
ここまではずっと素敵なヨーロッパ風のお部屋だったけど、
ケルンだけは日本のビジネスホテルのよう。ダイニングも。
高いホテル事情の中、安ホテルを選んだので仕方ありません。
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ケルン大聖堂近くの老舗のレストラン。
表は普通のカフェみたいだけど、店内は風格があって、
古い木のテーブルと椅子が素敵だった。
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ケルン名物ケルシュビールと、絶対食べるぞと決めていたロールキャベツ。
ビールは、「美味しい」とだけ伝えたつもりが、もう一杯きちゃって結局二杯呑むことに。
でもワングラス200mlだから小ぶりなのです。いけちゃいました。笑
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ケルンの地下鉄で最後に見たホーム床の傷。
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まりさんから譲っていただいたヘラとまな板。
日本に持って帰るので洗って窓辺で日干ししてるところ。
小さくて私の手にジャストサイズ☆
これで私もいっぱい魔法のスープ作るぞお~♪

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